《2》

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 ひとしきり逢介をからかった佐藤は、宥めるように逢介の肩を叩きつつ果恋に言う。 「だが、そんな明日原の優しさに好意を持つ女子がいても、まったくおかしい話というわけではないよ。いいじゃないか、恋のおまじない。青春だな、明日原」 「やかましいですよ……」  佐藤にため息を返す逢介を見て、果恋は、ふっ、とせせら笑った。眉間を少し上げて口の端から息を吐く、なんとも腹の立つ冷笑であった。 「まあ、世の中は広いですからね。あなたのことを好きになるような危篤な女子も、この世に一人くらいはいるのでしょう。私には想像も及ばない世界だわ。ごめんなさいね、私の想像力の無さが自分で情けなくなってくるわ」 「自分を卑下しているようで俺のことを罵倒するのはやめろ……ッ!」  わざとらしく肩をすくめる彼女を逢介は憎々しげに睨みつける。果恋はさらりと話を元に戻す。 「話が逸れたわね。とにかく、ものを盗む理由なんて、人によってはいくらでもあるということよ。単にあなたを困らせたいだけかもしれないし、ムシャクシャして盗んだノートがたまたまあなたのものだった、ということだってあるかもしれない」 「……でも、やっぱり無理だと思うけどな」  腕組みして不機嫌さを露わにし、逢介は口を挟む。果恋が眉根を寄せて、無言で逢介に発言を促した。 「今回の課題は、恋愛について作文を書くことだったんだぞ?」 「それがなんなのよ」 「考えても見ろよ。お前……そんな作文、他人に見られたらどう思う?」 「…………まあ、死にたくなるでしょうね」 「そういうことだ」
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