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第捌章
「あなたにとって思い出深い本であるように、わたしにとってもかけがえのない本なのです。残念ながらお譲りするわけにはいきません」と凛とした淀みない口調で、なんとも呆気なく断られてしまった。
「ああ・・・そこをなんとか」
懇願する私に、彼女は急に声のトーンを変え、優しく明るい声でこう提案した。
「ですが、こちらに来て読んでみませんか?」と。
電話口のその声は、なぜか心地よい響きで、鼓膜から入って遠い記憶をくすぐった。
いつか何処かて聞いたような懐かしい声にひかれ、私はその本屋へ行ってみる事にした。
手に入らなくとも、結末を読めるだけで十分だと・・・。
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