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バーコードグローブの販売は許可制で、認可店しか販売できない。ソロモン町では芹沢玩具店しか認可店がなく、その上、店主の芹沢はグローブの調整や修理までできるため、近所の子ども達からは博士と呼ばれ慕われている。
「そう!そう!俺もようやくバーコードグローブが持てるんだ!」
勢い込む爽太に、はたきを持ち、エプロン姿の加奈は冷ややかな目を向ける。
「だからって、何もこんな朝早くから来なくたって……。」
爽太と加奈、2人が喧嘩になりそうな雰囲気を芹沢が止める。
「それで?爽太くんはどのグローブにするのかな?」
カウンターのガラスケースの中には、数種類のグローブが飾ってある。
「俺ね、ずっと前から決めてんだ!」
そう言って、爽太はケースの真ん中に鎮座したグローブを指差す。
「この赤いやつ!」
「了解。それじゃあ、調整するから腕を出して」
「これでよしと!」
芹沢がカウンターに置かれたパソコン画面にキーボードで何かを入力し、椅子をくるりと回して爽太の方を向く。
「グローブの中に爽太くんの個人データを入力したから、すぐに使えるよ」
パソコンとグローブを繋ぐ配線わテキパキと外しながら、芹沢が言う。
「ありがとう!博士!」
駆け出して店を出て行こうとする爽太に、焦る芹沢。
「まだ、グローブの使い方の講習が……。」
「使い方は使いながら覚えるよ!」
そう言って店を出て行く爽太を、見送る芹沢親子。
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