第四章 曖昧

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「ただいま」 「おかえり」 そんな言葉が日常になってきた夏。 またすぐにいなくなってしまうのでは、と不安だった私の思いをいい意味で裏切って、奏は頻繁に我が家に来るようになった。 「今日は中華にしようと思って」 「いいね」 嬉しそうに笑う奏を見て、少し野菜を多めにしようなんて企む。 いつもニコニコしていることが多いけど、今日は特に機嫌がいいようだ。 「いいことがあったの?」 料理を開始した私の隣に来た奏に問いかけてみると、大きく瞬きをして私を見つめてきた。 「どうしたの?」 「いや……どうして分かったのかなって思って」 奏は、私がリズムよく人参を切るのを見て、一瞬顔を顰めつつも、首を傾げた。
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