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「大丈夫?」
「あ、はい。ありがとうございました」
「あのね、あんなふうに自分の身を犠牲にしてまで、人を助けちゃダメだよ」
「そんな……!」
「そういう優しくて、強いところが貴女のいいところなんだろうけど。危ないからね。特に、この辺りは」
男性がそう言いながら視線を動かしたため、私もつられるように周囲を見た。
あんな騒ぎになったのに、もう誰も私たちを見ている人はいない。
今のような出来事なんて慣れている。そんな雰囲気だった。
「すみませんでした」
「できれば、もうこの辺りには来ない方がいいけど」
「職場から自宅までの通り道だし、新しくできた温泉施設に行きたくて……」
「あのね、そういうことも、知らない男に言わない方がいいからね。ほんと、無防備だね」
「すみません……」
私が頭を下げると、上から小さな笑い声が降ってきたため、慌てて顔を上げた。
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