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結局しつこくしすぎたかもしれない。
「忘れない、の?」
「え? そうですね。忘れないです。というか、もう今の時点で忘れられなくなってますが」
「……そう」
これまで見せていた人形のような可憐な笑顔がなくなり、そこからあらゆる感情が完全に消えた。
それを見て、背筋に氷を当てられたかのようにゾクッとした。
冷たく、仄暗い虚無の世界を覗いたような、そんな不安感と恐怖感を抱く。
「あの……?」
「ううん、何でもない。でも」
「奏?」
何かを言いかけた彼の言葉を遮るように、別の男性の声がして、私は驚いて振り向いた。
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