第二章 距離

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「いえ、でも」 「奏のこと、振り回していいからね」 そう言って、ミツルは蠱惑的な笑顔を見せて去って行った。 この街の人はマイペースな人が多いのだろうか。 それとも、私が知らないだけで男性というのはこういうものなのだろうか。 智也は私に合わせてくれることが多かったから、ここ最近出会った男性が新鮮に思えた。 「ねえ、奏さん。ミツルさんから許可が下りましたね」 「……そうだね」 ふいっとそっぽを向いて呟く奏は、口を尖らせて拗ねているように見える。 その姿が可愛くて、三歳年下の弟と重なった。 その瞬間、ツキンと鋭い痛みが胸を刺したが、私はそれに気付かないふりをして、奏のスーツの袖を引っ張った。
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