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「いえ、でも」
「奏のこと、振り回していいからね」
そう言って、ミツルは蠱惑的な笑顔を見せて去って行った。
この街の人はマイペースな人が多いのだろうか。
それとも、私が知らないだけで男性というのはこういうものなのだろうか。
智也は私に合わせてくれることが多かったから、ここ最近出会った男性が新鮮に思えた。
「ねえ、奏さん。ミツルさんから許可が下りましたね」
「……そうだね」
ふいっとそっぽを向いて呟く奏は、口を尖らせて拗ねているように見える。
その姿が可愛くて、三歳年下の弟と重なった。
その瞬間、ツキンと鋭い痛みが胸を刺したが、私はそれに気付かないふりをして、奏のスーツの袖を引っ張った。
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