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大いなる眠り
11月1日 PM9:03
濱田空は議員秘書だが宅配業者を偽装し、生首町にあるアパート姫花に強盗に入った。
源藤アンナ議員は即日、空を解雇した。
11月2日
柿崎シンヤは生首町にある『太陽の花』って老人ホームをクビになった。
「君にはスキルが足りない」
先輩ヘルパーの氷上未華子に冷たい声音で言われた。ナカナカの美形だ。
絶望の縁に立たされたシンヤは生首小学校の前で立ちすくんでいた。
ガキたちの声がウザったい。
オヤジやオフクロに言うわけにはいかない。
メチャクチャ怒られる。
シンヤはもう35歳だ。
橋本タカトシに再会した。
顔はチンパンジー、体はゴリラ。
タカトシは2015年に自殺している。
「濱田を殺せ、成功すれば強盗が自由に出来る」
タカトシが言った。
税金やら光熱費やらで大変だ。
氷上たちを殺してやりたいと思っていたところだ。
シンヤはイケメンだ。よくモテる。
出会い系サイトで源藤アンナをゲットした。
同日 PM7:26
銃声が聞こえた。
沖田市の屋敷だ。
永野梨央は群馬県警の刑事だが、たまたま通りかかった。ドアは開いていた。
死んでいたのは濱田空だ。
写真が落ちていた。源藤アンナのものだ。
群馬県警はアンナを容疑者として捜査を開始した。
「懲りない男ね?」
沖田署刑事課の神剣サキは鼻で笑った。
サキは探偵フィリップ・マーロウが活躍する、レイモンド・チャンドラーの『大いなる眠り』を最近読んでいるが、内容が今回の事件が似ているように思えてならなかった。
サキは古い映画俳優、ハンフリー・ボカードを思い出した。祖母の大ファンだった。
『三つ数えろ』は『大いなる眠り』を映画化したものだ。公開はアメリカは1946年、第2次世界大戦の翌年だ。
日本の公開は1955年だ。
マーロウはロサンゼルスにあるスターンウッド将軍の邸宅を訪れる。
屋敷には大富豪の娘、姉のヴィヴィアンと妹のカルメンが住んでいるが、将軍は古書店主ガイガーがカルメンに対しバクチの借金の最速の名目で脅迫してきたと、マーロウに打ち明けて依頼する。
サキは悩んだ。
アンナはカルメンか?それとも将軍か?
将軍の用心棒でお気に入りのリーガンはマーロウとも旧知だ。
SPの山崎カオルを思い出した。
ガタイがよく吉田沙保里によく似ている。
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