昔の夢3

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«カランコロン» またお客さんだ。 ここはソコソコ人が多い。 大きくも小さくもない店の中に五六人はもういる。 シンと瞬さんはまだ奥で話をしている。 真剣なその表情に邪魔もできない。 ?「あれ?シンさんいないじゃんって何この子!!」 若めの人の声が聞こえふと視線をあげ上を見る。 そこに居たのはキンキンパツパツの髪の毛の人。 前髪をピンで止めて浅く帽子を被っている。 ?「うわぁ,めっちゃ美人じゃん。ねぇ君シンさん知らね?」 遥「シンならあそこで瞬さんと話してますよ?」 ?「あちゃー瞬さんとかよ…じゃあまたねぇと行けねぇじゃん…ブー」 小さな子供のように席に座り机に伸びる。 あれだ,よくいる不良の物語に出てくる下っ端の人。 ?「ねぇねぇ君なんて名前?僕はね~神宮寺麗ってんだ。よろしく」 遥「僕は…森山遥です」 ?「遥ね。ん,覚えた。僕のことは麗って呼んで。呼び捨てで構わないからさ。シンさんのこと呼び捨てなんだからさ」 遥「わかりました,麗」 ブーっとすねたような顔をしたかと思えばいきなり人のほっぺをつねって 麗「もぅ!!敬語も抜きだっつーの!!」 遥「わひゃった,わひゃった…いひゃいからはにゃして,いひゃいっいひゃい」 深海「おいレイちゃんよ~他人の家の猫勝手にいじめないでちょ~だいよ~。よっと,猫が痛がってるでしょうに」 話が終わったのか帰ってきたシンは僕をだっこして麗にそう言う。 麗「えー,俺も遥と仲良くなりたいんすけど!!つーかまさかのシンさんの隠し子とかっすか?」 深海「それ本気で言ってるなら埋めるぞ?」 ニッコリと効果音がつきそうなくらいの素敵な笑の下でなんか黒いオーラがチクチクと麗を刺している。 …大人気ない。 麗「じょ,冗談っすよ~。でも本当にどうしたんすか?こんな美少年…。なかなかいないっすよ」 瞬「店の前で拾ったんだと」 麗「は?店ってここのっすか?拾ったって親は?法的に大丈夫なんすか?」 親…法律…確かに今で何回も気になっていた。 鈴谷夫妻の家にいる時もずっと。森山遥の"本当の家族"は権力者の1種なんじゃないか…と。 理由は簡単で,小学校に通ってない。 3歳から今までの生きてきた証拠がない。 そうなれば警察沙汰やら児童保護施設やら色々出てきてもおかしくないのに。 遥「…多分大丈夫だと思うよ」 ボソッと放った言葉に3人は僕の方に視線を向ける。 あぁ3人並ぶとどこかのモデルの雑誌にいそうな顔だな…。 遥「3歳の時から今の今まで何の問題もなかったからね。法律的に中学校までは学校に通わないと行けないことになってるけど,僕幼稚園だとか小学校だとか通ったことないもん」 毎日家の前を通る小学生を見ていた。 見ていただけだった。桜が満開な春,ピカピカのランドセルを背負って友達とおしゃべりしながら歩く人を見て,いいな…なんて思っていた。 今となってはどうでもいいけど。 深海「まぁだろうな~。もし通ってんだったら一昨日のニュースで行方不明って知らされるのが当たり前だしな~」 瞬「おい,どういうことだそれ。聞いてねぇぞ拾ったとしか」 麗「そうっすよ!!俺たちにも納得できるように説明して下さいっす!!」 深海「説明しろって言われてもね~俺も正直ここまでしかわかんねぇよ?こないだ出た連続殺人犯が猫が一昨日まで住んでた家だってことだけよ?あとは俺も知らないつーの」 そしてそこでまた視線が僕の方へ向く。 あぁ3人とも似てる。 人を探るような視線…。 遥「…会ったばかりの人に教えれるほど僕は馬鹿な人間じゃない。それに意見があるのなら捨ててもらって構わない…」 最初から期待なんてしていない。 だってそうでしょ?期待したらダメ。 誰かに助けを求めると自分が傷つく。そんなのもう我慢出来ないもん。 深海「悪かったよ,許してちょ~だい?猫」 そう言って片手で僕を持ち上げたままで反対の手で僕の頬を撫でる。大きくて暖かい手に僕も擦り寄る。首に手を回しぎゅっと抱きしめる。 温かさが気持ちよくてだんだんと瞼が落ちる。 どうしよう,寝ちゃう。 深海「猫,今何歳だ?」 遥「いま?…じゅー」 深海「そうか,おやすみ」 ちゅっと瞼にキスを落とし微笑んだシンを最後に僕は意識を手放した。
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