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そのまま続いて八〇〇メートル時点で五十メートルくらい差が開いた。
(ここで頑張れば彼女と気持ち良くなれるんだ)。てつやの妄想パワーが力を与えた。一〇〇〇メートル時点から差が縮み始めた。最後の周になった。スパートをかけたてつやが陸上部員の彼をとらえた。一三〇〇メートル時点で並びかけた。そして最後のカーブで抜いた。てつやは二〇メートルくらい差をつけゴールした。勝った。
見ていた千恵子は笑い出した。
「速い」相手の彼は息を荒くしてトラックに倒れ込んだ。てつやは余裕で千恵子と笑い合っている。
「中学生時代は陸上部員だ」
「なんだ」対戦相手は絶句したようだった。
てつやはただ貧相なだけではなく、中学生時代に陸上部員をしていたために体がしまっているのだった。
てつやは千恵子の彼氏になった。でもどうすればいいのか分からない。別にふつうに付き合いたいだけだが、そのふつうが分からない。
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