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「この人が私のことを助けてくれたの。私の彼氏」彼女がてつやの手を触った。驚いたがうれしかった。 「千恵子の彼氏? このダサい男が」 「いいじゃん」 「彼氏はオレだろ」 「いじめをする人はいやです」 「オレと一五〇〇メートル走で勝負して勝ったら認めてやる。どうせ勝てないよ。貧相だな」  そういう彼はオリンピック金メダリストのジャマイカ人のウサイン・ボルトのような体格をしている。身長一九〇センチくらいありそうだ。  陸上部が使っている四〇〇メートルトラックに来た。 「高校総体とか出るよ。オレ」 「はい」  帰宅部のてつやは自信がなかった。ふたりとも半袖Tシャツに短パン。でも陸上部員の彼が履いているのは陸上スパイク。てつやはランニングシューズをはいていた。  陸上部員の仲間ががスタートの合図をした。ふたりとも走り始めた。スタート直後からボルトは飛ばした。てつやは後を追った。四〇〇メートルトラックを一周走った。すでに一〇メートルくらい差が開いていた。
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