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分も娘を庇ってビンタされ、赤くなった父の頬を見て呑み込まれる。
「私、殴られて当然のことをしたんだから仕方ないよ。それより父さんも大丈夫?」
父は頷いた。
「ごめんね、私がこんなんに生まれたばっかりに。あいつの腹ん中にいる間に流れればよかった」
「そんなことを言わないでくれ、まどか」
目尻に涙を潤ませて、父は円に近寄って肩をさする。障害を母親に理解してもらえない、哀れな娘を見る父の目に、別の人が写っていることは、できるだけ気にしないようにした。
ちろりろりーん。
生ぬるい偽りの優しさの空気を割って、円のスマホ声を上げた。
「あ」
円の足下にどしゃっと氷袋が落ちた。結露が沢山ついたそれを、父親が慌ててカーペットから拾い上げたが、円は気にしない。
「あの人からだ!」
大急ぎで通知のバナーをスライドして、トーク画面に飛ぶ。ぴゃっぴゃっと自分のズボンにかかった水を指で払いながら、父が円のスマホを覗き込む。
「誰だ?山口…?まどかのクラスにそんな子いたか?」
「クラスの奴じゃないよ。大人の人」
「先生か?先生と個人的に連絡先を交換して大丈夫なのか?」
円は父親が拾ってくれた氷袋を受け取り、机の上
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