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苦しんでいる人間が、耳が聞こえすぎて辛い、という分かりにくい症状で苦労している私を理解できるのか?「自分は耳が聞こえないのに、聞こえすぎて辛いなんて贅沢な」と、逆に罵ってくるのでは?
しかし、彼女の障害は、自分の障害とは真逆にも関わらず、境遇が驚くほど似ているのではないだろうか。1人だけ、皆が団欒している家から締め出され、17年間誰もいない荒野を彷徨っていた時に初めて巡り会った人のような…。
『逆なんです。私は、普通の人が気にならない音が気になったり、苦痛に感じたりすることがあるんです』
気がつくと、円は今までの苦しさをトーク画面にぶつけていた
。
『昔から、私は人が気にしない音が気になる子でした。ドアを閉める音や、花火が遠くで鳴る音にもびっくりして泣く。母親には神経質でめんどくさい娘だと罵られました。父親からは、自分たちの育て方が間違ってたから、こんな過敏な子になってしまったんだと謝られる毎日でした。学校に通い始めると、教科書のページをめくる音、椅子を引く音、夏の扇風機や冬のストーブが唸る音、果ては隣のクラスの先生の授業の声まで、全部がうるさい。自分のクラスの先生の話し声に全然集中できな
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