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「……前から“王さま”って思ってたの知ってた?」
単なる誤魔化しや言い間違えかと思ったけれど、少し引っかかった。
”王さま”と思っていたことはさっき白状したけれど、人前で相武くんを”王さま”と言ったことはない。
もっと前から知っていないと、私が“王さま”だと思っていたことを理由にできない。それに、具体的に言いあてるなんて。
ちょっとおかしい。
「さあ? それはどうだろ」
眉をひそめて首をかしげていると、相武くんははぐらかすような言葉を吐き、舌を出した。そのまま軽く伸びをし、小さく笑う。
「僕にとっては些細なことだよ」
確かに、と思った。
彼が私にいつから王さまだと思われていたか、彼が知っていたとしても、もうそれを告白してしまった。
それに、告白したというのに、引くことなく喋ってくれている。それだけで、十分な気がした。
私は再び窓の外に視線を戻し、サッシに肘をついた。
「平民の話を聞いてもしょうがないとは思うけれど」
「君が平民だとは思わないけどね」
ひやりと棘のある声にどきりとし、私は瞬きを繰り返した。
それは、どういう意味で言っているのかと。
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