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「で、なんで王さまだったの?」
「え、ああ。……理想の王さまがいたの」
確かめる間もないまま、いつもの優しい笑顔に戻った彼から動揺を隠すように、少し下がった眼鏡を押し上げた。
でも流石に、なんで王さまかは知らないのね。
少し安心しながら3本、指を立てる。
慕われる王さまには、理由がある。
「まず、民の話に耳を傾けること」
「ほう」
「次に、冷静に正しい判断を下せること」
「なるほど」
「そして、素や思っていること、傷を表に出さずに堂々としていること」
3つめを上げたところで、隣が沈黙した。相槌が返ってこない不安に駆られて顔を向けると、彼は少し驚いたような顔をしている。
「……あるように見えた?」
「さあ?」
その顔をよく見ようと、もう一度、メガネを押し上げる。
「でも普通なら悲しんだりするところを、相武くんがそうじゃなかったのは確か」
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