[C組と王さまの由縁]

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 傍からそれは、ゆっくりと顔を動かして、基本あるわけのないクラスメートの反応をただただ待っているように見える。けれど、この時彼の意識は、クラスメート1人1人の顔を見つめるように、ゆっくりと移り変わっている。  確かめたことはないが、多分、そう。  そうして確認し終えると、小さく頷き、「じゃあ、紙に書いてもらおう。いくつでもいいよ」と、案を出す方法から決める。  手を挙げさせることもあった。気分だと思っているクラスメートが大半だと思うけれど、彼は最適な方法を選んでいるのだと思う。  その証拠に、紙に書いた時に1番良い案をだしたのは、自己主張の苦手な女子だった。  また、手を挙げさせたとき。選ばれたのは元気が取り柄のうるさい男子の意見。これがちんぷんかんぷんな発言をしたのだけれど、彼が「例えばこういうこと?」「それで?」と質問を投げたことでその男子の意見は魅力的なものになって支持された。  そういった行動や発言が、女子からの「大人っぽい」「優しい」「王子様」、男子からの「アイツはすごい」という評価に繋がる。  私からしてみれば、全てを知っているように周囲を“見下ろす”彼は、おそろしく近寄りがたい。  不思議でまさに王さまのようだと思った。
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