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苦笑で返した相武は、窓の外、明るい空に顔を向けた。つられるように長峰も窓の外を見る。
雲の影が、彼らの居る部屋にかかるところだった。
「でも、長峰がそう思うように演技してるだけだったり」
「……え?」
いきなり響いた声に相武を見る。
「ん?」しかし、相武は再び入ってきた外の光に照らされながら、いつも通り笑っているだけだ。
相武を見たまま、長峰は首をかしげる。
今のは声か? と。
声にしては、頭に響きすぎた気がしたのだ。空気を伝ってきたのではなく、頭で直接声がしたような。
と、悩む長峰の机の上で、スマートフォンが短く鳴る。着信があったらしい。
「彼女かもよ」相武が茶化すようにいった。
「ああ、うん」それどころではない心持ちではあったものの、長峰はスマートフォンを手に取った。
その画面に映ったメッセージを見て、息をのむ。
それを横目に眠くなったのか、相武は唸りながら大きな伸びをした。
「……雛美が『愛実ちゃんから連絡来た』って」
困惑の声が長峰の口から漏れる。
んんっ。と少し唸った彼は、手を伸ばしたまま天井を見上げ、笑った。
「さあ、もう王さまはいないぞ」
―― おわり――
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