[王さまの誕生と邂逅《かいこう》のC組]

3/13
前へ
/71ページ
次へ
 手持ち花火の持ち手のような棒が3本刺さっている瓶は、数か月前から母親が消臭剤代わりに買うようになった。ルームフレグランスらしい。 ――リラックスと集中力。  いつか気になって調べた効果を思い出し、肺に溜まった冷えた空気を吐きだした。  クローゼットを閉じる。  椅子に掛けておいた部屋着用のジャージに着替え、学校に行っている間、充電器に繋がれて留守番していたスマートフォンをつければ、通知がたまっている。決まった時間に来るソーシャルゲームの通知をスワップして流しながら、ベッドへ。  フォローしているYouTuberの投稿の知らせをタップし、仰向けに倒れた。 『わwwwちょwwww』『大事故www』  画面に映った大げさなテロップを鼻で笑う。ゲーム実況と一緒に後でゆっくり見ようと動画を止めた。  最後に、とっておいたクラスLINEのトーク画面を開く。 『教室でも言ったけど、みんな今までありがとう。高校で会う人も居るだろうから、その時はよろしく』  修了式の終わった時間に、2年から他校に通う翔からのメッセージが置かれていた。どうやら、翔は学校にスマートフォンを持ち込んでいたらしい。  そこにポツポツと別れを惜しむメッセージが返され、思わず頬が緩む。 『また高校で笑』  俺もそうメッセージを送ってから、スマートフォンをベッドの上に伏せた。
/71ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加