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凄いな…独学で人形作りを学ぶなんて…少しだけ彼女に興味がわいた。
「…入って。」
それから僕は彼女に様々なことを教えた。髪の毛一本一本の作り方、目玉の描き方など僕の持つ技術を全て彼女に教えた。彼女は吸収がよく、教えたことが次の日には完璧にマスターできているようだった。
そんな彼女とは裏腹に、僕は彼女といるとよいものが作れなくなった。いや、一人のときでもこれだとものは作れない。なぜだろう。
僕は自分を満たすために人形を作り始めた。満たされていないから良いものが出来た。
逆に満たされている時はあまり良いものが出来なかったことを思い出す。
「…僕は満たされているのか?」
そういえば、サンドラが僕の工房に通うようになってから僕はスランプ続きだった。
「彼女によって僕は…満たされているのか?」
耳元まで顔が真っ赤になった。始めは優秀だから好意をもっていただけだった。
それがいつからか異性として意識していたなんて…。
おもえば僕は彼女が家に帰るたびに残念な気持ちになったり、彼女が近くにいると楽しくなってきた。…恋をしているのだろう。女性を恐れている僕が。
「…仕事が出来ないじゃないか…。」
しかし問題は無かった。今までに稼いできたお金は人生を五回分遊んで暮らせるほどある。
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