見上げる空なんてない

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 そして粉々に砕けた残骸を増えた地図で丁寧にくるんで、自由の海へと放り投げた。このとき、胸にしまっておいていた、大切な物も一緒に捨ててしまったことに、彼は気づいていなかった。  なくした何かに気付いた時、彼の心にはとてつもなく巨大な黒い穴ができていた。 そしてジブンは自分が誰かが分からなくなっていた。  何かを失ったことに後悔して、憤慨して、憐れんで、拒絶して、反省して、ジブンはもういちど、今度は自分の手でユートピアを作ろうと決心した。  見上げる空なんてない。でも、この白紙の空は、無限の可能性を秘めている。
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