最後のピース

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 *  今年の夏、僕の母校が十年ぶりの甲子園出場を決めたと地元のテレビや新聞が連日こぞって伝えていた。しかし甲子園での結果は一回戦敗退で、帰郷した選手たちを讃えたあとはすぐに、異常な猛暑と夏休みのお出かけスポットばかりに話題が切り替わった。  球児たちの健闘を伝えるネット記事の最後に、カメラマンとしての彼女の名前を見つけたのは偶然だった。  十年前の甲子園の決勝で逆転ホームランを打たれたピッチャーが、彼女の想い人だったことを僕が知ったのも、つい最近になってからだ。  今頃になって、あの冬の日の、彼女の言葉をやけに思い出す。彼女は彼女の最後のピースを、もうとっくに嵌めたのだろうか。  あの頃すっかり彼女に見透かされていた僕の最後のピースを、僕は、嵌めることも捨てることも、未だにできないままでいる。
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