掌と月

門に辿りついたから自転車にまたがって、坂道を下る。帰り道は本当に楽だ。夏の朝の自転車登校は女子になっては死活問題だ。汗臭くなるのは確実だし、うちの学校の制服は汗染みがすごく目立つ。他の学校より可愛いんだけど、夏だけはこの制服が嫌いになる。しかもこの学校は坂の上にある。立ち漕ぎで全力疾走するんだから汗をかかないわけがない。
それならバスを使えばってよく言われるけれど、バスはあんまり好きじゃない。修学旅行とかなら全然平気だけど、全く知らない人たちと混み合う車内でぎゅうぎゅう詰めになりながら毎朝過ごすくらいなら、こっちの方がマシだって思う。
まぁ、今みたいに帰りにブレーキをかけないで思いっきり坂を下るのも気に入ってるからいい。首筋にへばりついた長い髪が、風を受けて一気に剥がれてくあの感じが結構好きだ。