プロローグ

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「クラフト」  それはおとぎ話で聞いた魔法の呪文そのものだった。少なくとも幼い少女にはそう思えた。  薄暗い工房の中、ガラス管の中で色とりどりに光を放つ祖原子(エーテル)がそのたった一言で精霊に生まれ変わって行く。  あるものは羽毛の一つ一つが金属で出来た小鳥に。あるものは白い光の体毛を持つ子犬に。  その光景を表す言葉をこそ、少女は魔法だと信じた。  生まれ出た精霊たちは、今まで見たどんな生き物よりも綺麗で、神秘的で、何よりも温かいと思える。  だから、同じだと思ったのだ。  大人たちが決して近寄ってはいけないと言う森に現れる精霊も、きっと同じなのだと。
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