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スケッチブックを渡されたときに開かれていたページは先程まで描いていたスケッチだった。
彼女はその絵を見てそう言ってくれたのだろう。
……ということは?
「あ、すみません、勝手に貴女のことを描いてました。もし不快だったら直ぐに処分するので」
「とんでもない!絵描きさんに描いてもらえるなんて、素敵じゃないですか。是非そのまま続けてください!」
少し興奮気味に話す彼女から、本心で言ってくれていると分かった。
と、俄かに彼女の顔が曇った。
「でも、今日はもう暗いですし、描けませんね。私も用事があるし……」
うんうん唸る彼女の頭が下がっていく。
と思うとパッと弾かれたように上がり目が合う。
「こちらの公園にはよく来られるのですか?」
「はい、このベンチに座ってることが多いですがね。うたた寝したりとか」
「あ、分かります!ここってお昼寝には最適な場所ですよね!私なんかさっきのうたた寝で焼き芋を頬張る夢を見ちゃいました」
なんだ、ただの同類か。
「話がそれましたね。もし明日お時間があれば、明るいうちにここでまたお会いするのはどうですか?」
彼女の突然の提案に思考が一瞬止まるくらい驚く。
しかし、もっと驚いたのが、気持ちに余裕が出てきた僕の発言だった。
「明日と言わずに、明後日でも明々後日でも!」
……なんと大胆なことを言ってしまったのか。
彼女だって困ってしまうだろう。
そう考えながら返事を待つ。
彼女はにへっと笑いながら、
「はい、楽しみにしています。ではまた明日」
と言い軽く会釈した。
「ええ、また明日。お元気で」
まさかの返答を貰えた僕は鸚鵡返しに変な言葉を付けた返事しか出来なかった。
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