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鉛筆を持つ手がぎこちなく動く。
熱に浮かされた心は近所の小学生がたてるランドセルと駆け足の音で引き戻される。
もう下校時間なのか、元気を持て余している子供たちは疲れた顔一つ見せずに前を通って行き、集団でおしゃべりをしながら歩いていた少女達が、クラスメイトの話題だろうか、黄色い声をあげながら彼女の座るベンチの前を通り過ぎる。
その甲高い声で彼女は徐に目を覚ました。
暗くなりかけている空を見て少し驚いたように目を見開く。
記憶を手繰り寄せているのか、幾ばくか停止し、数秒後に慌てて帰り支度を始めた。
何か用事でもあるのだろうか、かなり乱雑に本を手持ちの鞄に詰める。
その拍子に金属製の栞がキラリと一瞬光り彼女の足元へ落ちるのを僕はしっかりと見た。
しかし慌てている彼女は気が付かずに立ち上がりその場を去ろうとする。
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