2 糸の端

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「えっ? ちょ、待って」 大祐は、思わず道の真ん中で姪の手を引き立ち止まった。 「ちょっと携帯見せてくれない?」 いきなり慌てだした大祐を怪訝そうに見上げる有希は、それでもすんなり 自分の携帯を差し出してくる。 そして、その履歴を見た大祐は、思わずその場にしゃがみ込みそうになった。 マジかよ……。 液晶画面の中に並んだ履歴の一番上には、頭三桁が「090」の自分の番号が残っている。 そして、「どうしたの?」と尋ねる姪に、短く尋ねた。 「その人と、何か喋った?」 「うぅん。大ちゃんが出るとばかり思ってたから、ビックリして 切っちゃった」 女の顔を覗かせてみても、やっぱりまだ子供だ。 だから、「ダメだったかなぁ」と不安そうに言う姪に、大祐は淡く微笑んで かぶりを振った。 「気にすんな。さ、どこから行く?」 そして、そう口では言いつつ、心の中は別の事を呟いていた。 まさかマジで赤い糸……、なんてな。
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