3 リアルな空耳

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3 リアルな空耳

真友子にとって平日は、立場上からも運動とは無縁にならざるを得ない。 だがそんな生活は、さすがに三十路を越えた辺りから、如実に体重に 反映されるようになった。 そのため、その頃から週末のジム通いが習慣となっている。 だから今では、週末の午前はたっぷりの休養とたまった家事をこなし、 午後に二時間ほど汗を流しに行く。 そしてこれが習慣になってから、この週末の二時間は、程よい気分転換にもなっている。 しかし、その気晴らしになるジムで、親しい人間関係を作る気は彼女には ない。 人間嫌いという訳ではないが、人と居ないといられない(たち)でもない。 その上、チーフとして人の上に立つようになってからは、仕事ではホッと できることも少なくなり、プライベートでは気ままにできる一人を好むようにもなった。 加えて、30も半ばを迎えると、友人という括りの半分以上は「母」か「妻」になっている。 その一方で、独り身の友人たちとは似たり寄ったりの立場で、もう週末に 一緒に楽しむという状況にもない。 だから、週末は一人だけというのが、ここ何年もの間の当たり前。
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