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「そろそろ出ましょうか」
早鐘を打つ胸を無理矢理鎮め、笑顔で凛月は言った。
『そうだね、凛月君明日から学校だし、早く帰った方がいいもんね』
「はい」
夏生の運転する車に揺られながら、凛月は明日どうクラスメイトと話そうか考えていた。
きっと耳が聞こえないと言ったら驚きはするだろうが、受け入れてくれるだろう。しかし、いくら凛月が手話をやったからと言ってクラスメイトにまでそれを押し付けていいはずが無かった。
(明日からどうしようかな、、、)
助けてくれそうな人に心当たりはある。ただ、そいつには他の人の何倍も恩があり、これ以上迷惑をかけたくないというのが本音だった。
(あいつならきっと助けてくれる、、、でも、もう散々助けて貰ってるからな)
凛月は小さい時よく女の子と間違えられて、連れ去られそうになったことが多々あった。そんな時子供ながら助けてくれたのがそいつだった。
所謂、幼馴染みというヤツである。幼稚園の時から今までずっと一緒にいた。腐れ縁と言ってもいいかもしれない。
(あいつしか頼れないか、、、しょうがない)
結局、申し訳ないという気持ちと、きっと何とかしてくれるという期待で彼を頼ることにした。
『着いたよ、凛月君』
物思いに耽っているといつの間にか家に着いていたようだ。夏生がキョトンとした顔で覗き込んできた。
「あぁ、すみません。直ぐに降りますね」
『いいよ、焦らなくて。もう君の家でもあるんだしね』
「はい、ありがとうございます」
『今日は俺が料理するからね!!期待しててよ!!』
夏生はニコッとして凛月を安心させるように言った。
「じゃあ、俺は手伝いますね」
その後、2人で一緒に作って食べたご飯は凛月をリラックスさせるには十分で、明日への不安が少し楽になったな、と凛月は思った。
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