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「、、、、、、」
葵が何か話しかけているようだが、全く聞こえない。
改めて実感させられた。人と満足に会話も出来ず、相手方に頼るしかできない自分の不甲斐なさを。
「葵、ごめん。俺さ耳が聞こえなくなったんだ。だから今葵が話してたこと何一つ分からない」
「ッ!?」
葵の大きな瞳が大きく見開かれ、驚いていることを凛月に教えた。
(やっぱり、突然言われたら困るよな、、、)
すると、葵はおもむろにスマホをだし何やら文字を打ち始めた。
ヴーヴー
「?」
凛月の携帯が振動した。
『大丈夫か!?俺に何か出来ることあるか!?何でも言えよ!!』
「!」
どうやら凛月の心配は杞憂だったらしく、葵は直ぐに受け入れた。
「俺が嘘ついてるとか思わないの?」
『思わないよ、お前がそんな事するやつじゃないことくらい知ってるよ!何年の付き合いだと思ってんの』
「そっか」
思わず笑みが零れた。
(俺の幼馴染みは良いやつだな)
「ありがとう」
『いいよ、やっぱりお姉さんの事が原因?』
葵には姉の事は言ってあった。
というのも、先週の金曜日に病院から学校へ連絡があり姉の事を知らされたのだ。その時葵もそばにいたので知っていて当然といえば当然であった。
「ん、多分ね」
『そうか、、、お姉さんの事は残念だったな。』
凛月は葵の、こういう下手に慰めの言葉を口にしない所を好ましく思っていた。
『何かあったら言うんだぞ』
「うん、ありがとう」
優しい幼馴染みを凛月は少し誇らしく思った。
『学校には言ってあんのか?』
「言ってあるよ、今一緒に住んでる人がいてね、その人が連絡入れてくれたんだ」
『一緒に?』
「うん、姉さんの婚約者だった人でね、お世話になる事にしたんだ」
「へぇ、、、婚約者、ね」
「?、どうかした?」
一瞬葵の目が剣呑な光を帯びた気がした。
『いや、何でもないよ』
「そう?」
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