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教室に着くとクラスメイトが一斉に話しかけてきた。
聞こえないから反応が出来なくて、話しかけてくる彼らの顔を見るのが辛かった。
「おい、困ってるだろ!いっぺんに話しかけるな!」
肩を掴まれ、振り返るとやはりそこには葵の顔があった。
(俺のSPか何かかよ、、、ありがたいな、、、本当に)
聞こえなくても、大体言ってることは想像出来た。
彼には探知機でも付いているのだろうか。まるでヒーローのようだった。
『大丈夫?俺が皆に言おうか、耳のこと』
「ううん、大丈夫自分で言う。ありがとう」
凛月はクラスメイトに順々に話して聞かせた。中にはショックを受けたような顔をしてる子もいたが、構わず喋り続けた。
受け入れてくれるだろうか、分かってくれるだろうか、そんな不安が頭の中でぐるぐる回った。
(きっと、、、きっと分かってくれる)
全てを話し終えた時、凛月はなんとも言えない達成感があった。友達は多かったが、今までこんなに自分の事を沢山喋った事は無かった。
1人がスマホを出して文字を打った。
『大丈夫、これからもお前はお前だろ』
それに、連鎖するように他の人も打ち始めた。
『大丈夫!!』
『私も手話やる!』
『困った事があれば言えよ!』
『聞こえるようになるといいな』
沢山の暖かい言葉だった。
思わず振り返ると葵が何故か自慢気な、そして誇らしげな笑顔を浮かべていた。
大袈裟かもしれないが凛月には、この一瞬の出来事が宝物に思えた。
「ありがとう、皆」
聞こえないくらい小さな声で呟いた。
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