2章

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教室に着くとクラスメイトが一斉に話しかけてきた。 聞こえないから反応が出来なくて、話しかけてくる彼らの顔を見るのが辛かった。 「おい、困ってるだろ!いっぺんに話しかけるな!」 肩を掴まれ、振り返るとやはりそこには葵の顔があった。 (俺のSPか何かかよ、、、ありがたいな、、、本当に) 聞こえなくても、大体言ってることは想像出来た。 彼には探知機でも付いているのだろうか。まるでヒーローのようだった。 『大丈夫?俺が皆に言おうか、耳のこと』 「ううん、大丈夫自分で言う。ありがとう」 凛月はクラスメイトに順々に話して聞かせた。中にはショックを受けたような顔をしてる子もいたが、構わず喋り続けた。 受け入れてくれるだろうか、分かってくれるだろうか、そんな不安が頭の中でぐるぐる回った。 (きっと、、、きっと分かってくれる) 全てを話し終えた時、凛月はなんとも言えない達成感があった。友達は多かったが、今までこんなに自分の事を沢山喋った事は無かった。 1人がスマホを出して文字を打った。 『大丈夫、これからもお前はお前だろ』 それに、連鎖するように他の人も打ち始めた。 『大丈夫!!』 『私も手話やる!』 『困った事があれば言えよ!』 『聞こえるようになるといいな』 沢山の暖かい言葉だった。 思わず振り返ると葵が何故か自慢気な、そして誇らしげな笑顔を浮かべていた。 大袈裟かもしれないが凛月には、この一瞬の出来事が宝物に思えた。 「ありがとう、皆」 聞こえないくらい小さな声で呟いた。
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