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夏生side
一瞬、目を奪われた。
凛月の笑った顔は静流にそっくりだった。泣き顔も似ていたのだか、夏生が静流と過ごした時間の中で1番見てきた笑顔は凛月の笑顔と瓜二つだった。
(本当にそっくりだった、、、静流、、、君がいなくなっても、俺は君以外を思うことはきっと無いんだろうな)
凛月の笑顔を見た時改めてそれを再確認した。愛する人を亡くした喪失感と未だに心の中に残り続ける未練を。
元々、凛月達姉弟はとても似ていた。夏生も初めて凛月と会った時、静流が男になったらきっとこうなるんだろうと思った。
睫毛の長い大きな瞳は見つめられたら誰でもドキッとするだろう。目をふせれば長い睫毛が影を落とし何とも言えない色気を醸し出す。ふっくらとした唇はまるで、紅を引いたかのように紅く、そこから覗く白い歯は小さく輝いている。スっと伸びた鼻梁も理想的な形と高さで、全てのパーツが嫌味無く並んでいた。
そんな類稀な美貌を持つ姉弟だからこそ、全ての表情にどちらかの顔が必ずと言っていい程よぎるのだ。
(静流、、、もっと一緒に、、、居たかった、、、)
彼女の事を思えば否応なしに涙が溢れてくる。
実は、凛月に同居を提案したのは贖罪の意味もあった。
彼女が亡くなったその日、夏生と待ち合わせをしていたのだ。ただ、夏生は仕事の合間を縫っての逢瀬だったので、少し待ち合わせの時間に遅れてしまい、待ち合わせ場所で待っていた静流にトラックが突っ込んだのだった。
あともう少し、少しだけでも早く着いていれば静流は死ななかった。そう思わずにはいられなかった。
きっと、静流も、凛月も贖罪なんて望んで無い。頭では分かっていても、夏生は何も出来なかった自分が不甲斐なく思えて何かせずにはいられなかった。
だから、せめて残った凛月だけでも幸せにする。そう夏生は心に誓っていた。
そんな中で見た、凛月のあの笑顔は夏生の心を揺さぶるには充分だった。
(凛月君、、、君は幸せになって、、、)
だからこそ、もう一度心に固く誓い、決意した。
(君だけは、必ず俺が守る。)
そんなことは知らず、目の前の病室のベッドで幸せそうに眠る凛月を見て、夏生は微笑み、心に一抹の不安を抱えたまま、病室を後にした。
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