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嫌いになった、わけじゃない。苦手だった華奢な彼の身体にも、もう慣れた。
私の手を引いて、自分の身体を大きく見せるように、大股で歩く樹君の背中の後を、顎を引いて、できるだけ小さく見えるように肩をすぼめて歩くコツもつかめてきたところ。
だけど、時々思う。
『なんか違う……』
商社に勤めるお父さんの仕事の関係で、海外で育った樹君は英会話が堪能で、愛情表現がストレートで熱い。無駄に。
私の髪を撫でて、引き寄せたおでこにキスをする。私はそれを、首をすくめて受け取る。照れているわけじゃない。けれど彼の目にはきっと、私は、はにかんだように見えているのだと思う。
樹君と知り合ったのは、高校一年の時に訪れた彼の大学の学園祭だった。友達のゆっきーと、胸をどきどきさせながら。ふたりともちょっと大げさにはしゃいだりして。
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