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「でもさ、樹君んちって、まじで金持ちなんだね。フツー、家に暖炉なんかないよ。そういう家だから、きっと優待券なんか腐るほどあるんだろうね」
ゆっきーは目を細めて、慎重にアイラインをひきながらそう言った。
「……そうかもね」
舞浜にあるレジャーランドが大好きなゆっきーは、そこに、タダで私たちをちょくちょく招待してくれる樹君に、絶大な信頼と尊敬を寄せている。今日も、一学期の終業式のあと、樹君たちと合流して半日遊び倒す予定なのだ。
「藍も早く支度しなよ、送れちゃうよ」
「……うん」
もたもたとカバンの中からメイクの入ったポーチを出そうとした時、さっき担任から渡された成績表がちらっと見えた。奥の方に沈めても、私の目はどうしても見ないふりをすることが出来ない。
三年になってから、成績は急降下を辿る一方だった。私がだらけた、というより、みんなはまだ余力があったのだ、と思い知らされた。そのエネルギーはいったいどこから来るのだろう。
中学受験で第一志望の学校に入って六年目。一定の成績を取っていれば付属の女子大にも入れる好環境。それなのに、私には、もうほとんど余力が残っていない。枯渇しちゃってる。だって、そこに、自分のやりたいことが見えてこない。そんな付属の女子大への進学もレッドライン。
そもそも、私は、どこへ向かって歩いていたのだろう。
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