ドロップアウト

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制服の上からゆっきーと揃えたおそろいのTシャツを着て、前回新調した耳付きのカチューシャをはめて、駅のトイレを後にする。ゆっきーの後を追う私の目に入ったのは、鏡に写った、虚ろな目をして唇を真っ赤に染めた、マヌケねずみ姿の自分だった。  東京駅で京葉線に乗り換える。ゆっきーとイヤホンを分けて、少し鼻にかかったリタ・オラの歌声を聞きながら、電車のドアの窓に顔を付けて、梅雨明け間近の、雲ひとつないブルーを見上げた。 「この曲、いいね……何言ってんのか全然分かんないけど」 ゆっきーの正直な感想に思わず吹き出す。お馬鹿さ加減を共有することで親密になれる気がしていた。でも、本当は共感なんかしていない。昨日の夜中、勉強そっちのけで、歌詞に出て来る単語をひとつひとつ調べて和訳してみたから、なんとなくわかるのに。私はわからないふりをする。 ゆっきーと笑い合うことは、常習性の高い麻薬のよう。良い加減なところでやめておかないと、自分が壊れてゆく。 きっと、それはゆっきーだって同じなのかもしれない。
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