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「ゆっきー、ごめん。やっぱり、私、今日はやめとく」
「え?」
ゆっきーが何か言いかけた時、ドアが閉まって、電車はすぐに動き出した。
窓ガラスにもたれかかったまま、ずっと窓の外を眺めていた。蘇我駅に着くと、内房線に乗り換えた。人気のまばらな車内でTシャツを脱ぐと、口紅をティッシュでふき取った。
どこかでほっとしている自分がいる。ひとりぼっちの不安をかき消すように、耳の奥の音量を上げた。
『藍ちゃん、どうしたの?』
ゆっきーから事情を聴いた、樹君からのメッセージを開く。
『ごめん。急に体調悪くなっちゃって今日は帰る』
間髪入れずに返事が返ってくる。
『大丈夫?迎えに行こうか?』
『平気だよ。ありがとう。ごめんね』
『今どこ?』
『もうすぐ家』
『オレも行くよ』
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