ドロップアウト

9/19
前へ
/35ページ
次へ
「ゆっきー、ごめん。やっぱり、私、今日はやめとく」 「え?」 ゆっきーが何か言いかけた時、ドアが閉まって、電車はすぐに動き出した。  窓ガラスにもたれかかったまま、ずっと窓の外を眺めていた。蘇我駅に着くと、内房線に乗り換えた。人気のまばらな車内でTシャツを脱ぐと、口紅をティッシュでふき取った。 どこかでほっとしている自分がいる。ひとりぼっちの不安をかき消すように、耳の奥の音量を上げた。 『藍ちゃん、どうしたの?』 ゆっきーから事情を聴いた、樹君からのメッセージを開く。 『ごめん。急に体調悪くなっちゃって今日は帰る』 間髪入れずに返事が返ってくる。 『大丈夫?迎えに行こうか?』 『平気だよ。ありがとう。ごめんね』 『今どこ?』 『もうすぐ家』 『オレも行くよ』
/35ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加