指先の体温 #2

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涼ちゃんのものでいっぱいの洗濯物を抱えたおばあちゃんが、いつの間にか横に立っていて、ぽつりとつぶやいた。私たちに気付いたおじさんが、こちらに向かって手を振っている。 「藍ちゃん!あとれこっちおいれ!冷たいものをあげるから!」 活舌は良くなかったけれど、鼻の頭をくしゃっとさせる笑い方は健在だ。ちょっとホッとする。 「行きまーす!あとでー!」  二階の部屋に戻って来ると、涼ちゃんからもらったお古の充電器を繋げて、スマホの復活を待った。 希望している女子中を目指すことで頭がいっぱいだったころ。土曜も日曜も塾で過ごしていたあの頃。涼ちゃんは、どんな風にしてここで生きていたのだろう。そんなことを考えながら、充電器のコードについた無数の小さな傷をなぞって、私の知らない涼ちゃんに思いを馳せた。 窓にもたれかかったまま、考えるのは涼ちゃんの事ばかり。樹君への返事のことは、もう、すっかり飛んでいた。 きっともう誰かのモノなのに。私の指は、涼ちゃんの体温ばかり思い出していた。
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