他力本願

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「藍?どこか行くの?」 おばあちゃんが私に気付くと、一斉に小さな視線もこちらに向けられてたじろいでしまう。 「あ……うん、おじさんに顔出してこようかなって……涼ちゃん、遅いし」 「あら、まだ帰ってないの?……そう、行ってらっしゃい。和之君によろしく言ってね」 「うん」 そっとドアを閉めると、聞こえてくる、拙い疑問質問の嵐。 「あの人だれ」 「先生の子供?」 「孫よ。先生の娘の娘」 「なんでいるの」 何でいるのかなあ。お姉さんにも良く分からないよ。  砂を払ったローファーの中に素足を突っ込む。靴下なしは辛い。靴下だけでもコンビニで買えばよかった……って言ってもコンビニに行くだけでも足がいる。歩くことしか知らない、私の無能な足を玄関で無意味にぶらぶらとさせながらつぶやく。 「早く帰って来ないかな……涼ちゃん」  縁石を飛び越えて、通りを渡って倉田酒店の前に立つ。店先は何も変わっていない。錆びた看板の角すら、懐かしい。
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