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涼ちゃんと合わないという連れ子だ、と瞬間にそう思った。何の躊躇もなく、ずんずんと奥へ入って行く。胸が、ざわっとした。
「ごめんなさい、電話中だった……」
そう言って戻って来て、広げた男性の両手がご用件はと聞いている。
「……あ、えっと……あの……」
好みのアイスを買って出直せばいいのに、まぬけな私は百円玉すら持って出てこなかった。
「その制服……東京の高校じゃない?」
取りあえず、頷く。
「やっぱり。あれでしょ、悦子さんのところの……藍ちゃん?とか?」
「そう……です」
なんだ、と言って男性が笑って、クセっけのある前髪をかきあげる。メガネの奥の目は大きく、二重。頬が丸いので、油断したらすぐに太っちゃいそう。
「僕の大学と最寄り駅が一緒だから、よく見るよ、その制服」
「そうなんですか?……じゃああの、国立の……めちゃくちゃ頭の良いとこに……」
「うん」
中途半端な謙遜もなく、男性は軽く頷く。こういうところが、涼ちゃんと合わないのかな。
「金を使わないで進学するって考えると、必然的にそういうことになるんだよ。金かけて使えない学校出たって、使えないものは使えないし」
ああ。そうですか。彼が、神々しく見え始めると、途端に自分の存在がゴミに見えてくる。
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