矛先 #2

1/7
前へ
/35ページ
次へ

矛先 #2

言葉が続かない。そんな彼女の切実な想いを、私の頭はかすめたこともなかった。 黙りこくる私とゆっきーの間を、ランチ時で忙しく動き回っているウエイトレスを、涼ちゃんは、頬杖をついたまま目で追っている。 「……樹君とヤったんだよ、私」 「え……」 涼ちゃんの視線が、ちらりと私の顔色を窺ったのを感じた。 「何にも気付かないんだね、藍は」 「だってゆっきー……」 何にも言わなかったじゃん。 「藍だって……してるんでしょ、同じこと」 「…………」 してないって、断言して良いのか分からなかった。そういう事を、限りなく期待している自分が居たことは否めないから。 「樹君よりこの人が良いなら、さっさと選んで樹君の前から消えてよ!」
/35ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加