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矛先 #2
言葉が続かない。そんな彼女の切実な想いを、私の頭はかすめたこともなかった。
黙りこくる私とゆっきーの間を、ランチ時で忙しく動き回っているウエイトレスを、涼ちゃんは、頬杖をついたまま目で追っている。
「……樹君とヤったんだよ、私」
「え……」
涼ちゃんの視線が、ちらりと私の顔色を窺ったのを感じた。
「何にも気付かないんだね、藍は」
「だってゆっきー……」
何にも言わなかったじゃん。
「藍だって……してるんでしょ、同じこと」
「…………」
してないって、断言して良いのか分からなかった。そういう事を、限りなく期待している自分が居たことは否めないから。
「樹君よりこの人が良いなら、さっさと選んで樹君の前から消えてよ!」
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