0人が本棚に入れています
本棚に追加
涼ちゃんはまた考え込んでしまっている。涼ちゃんが黙ると、私はすぐに自分の答えに間違いがあったんじゃないかと考えてしまう。そんな探り合いじゃ、きっと結論なんか出ないんだ。
「俺さ……」
涼ちゃんが座り直して私の方へ身体を向けた。
「高校出て、行きたかったとこに就職出来てそこの社長にもかわいがってもらって何の不満もなかった。でも、親父が倒れて、配達もままならないってなった時、跡なんか継ぎたくなくて。でもそこの社長に説得されて戻る気になったんだよ。それでも渋々。やっと自由になれると思ったのに。結局、俺はここに縛られるんだって思うと、なんだか突然、全部が嫌になってさ。そんな時だよ。お前が戻って来たのは」
「そんな風には見えなかったよ。てきぱきしてて、すごいなあって思ったもん、私」
「全然……。でも……だせえって思われたくなくて」
「誰に?」
「……お前にだよ」
涼ちゃんが口を尖らせた。
「……やっぱ……いなって思ったんだよ」
「え?」
「……かわいいなって思ったって言ったんだよ」
眉間にしわを寄せたまま、涼ちゃんがちょっと苛立ったようにして言い直した。
「そんな素振り、全然なかったよね……うん、まるで感じなかったよ」
「見せるわけねえじゃん、そんなの。カッコわりい」
「じゃあわかんないよ」
最初のコメントを投稿しよう!