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選択肢にノーはない #2
「つぶってろよ……やりずれえじゃん」
「……う、うん」
キスにこんなに手こずるなんて、ちょっとキャラと違う。わざと勿体ぶっているんじゃないかと思ってしまうほど時間をかけて、涼ちゃんは私の唇の端っこに自分の唇をあてるだけの軽いキスをした。
正直に言って?もちろん、物足りない。もっと強く抱きしめて、好きだとか愛してるとか言い合って盛り上がりたいのに、涼ちゃんは、もうこれが精いっぱいだと言わんばかりに大きなため息を吐いている。
「……やっぱり、気になる?美咲さんの事……」
「え?ああ……いや……」
歯切れが悪い。だけど、彼女の名前を出した時の涼ちゃんの表情はどこか上の空で、美咲さんの事を考えていたわけではなさそうだった。
「……帰ってきたら……もういないんだなって思って……」
「そうだよ……帰らなきゃ。学校、行かなくちゃ……」
「だから、キスなんかしたら……余計に辛くなるだけじゃん」
「しなかったら、辛くなかったと思う?」
涼ちゃんはふっと笑って首を横に振った。
「高校卒業したら……お前、どうすんの」
「進学……できたらすると思う」
「二年?四年?」
「……四年」
「四年か……」
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