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『人格なき学識』と『労働なき富』
「コウタ?」
小さく開かれた扉の向こうにいるサラは、銀色の前髪を揺らし、その青い瞳をコウタに向ける。
「昨日はすまない」
「なぜ謝るの? 後悔しているの?」
「そう言うわけじゃない……」
サラは小さくため息をつくと、「いいわ、少しだけ話をしましょう」と言って扉を開けた。台所に置かれたマグカップも、小さなベランダに干されている洗濯物も、今朝と何も変わらない。
「サラ、君はずっとこの街に住んでいるのか?」
「ええ、私の肌は白いけれど、この国の生まれよ」
「そうか」
コウタは後ろめたい気持ちに襲われつつも平静を装う。内戦調停を行った国連軍は、米軍を中心として、日本の自衛隊、中国陸軍、英国空軍などが参加していた。激化する内戦に手を焼いた国連軍は、アザニア人民機構の拠点であったこの街を徹底的に空爆したのだ。
「あなたがたの軍事介入によって、この国は一瞬で消え去った。それから四半世紀を経て、あなたたちは復興と称した先進国主導の傀儡国家を作り上げようとしている。まるで最初からそう望んでいたかのように」
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