降ってきた少女

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 クトリは小さく悲鳴を上げながらバンと一緒に崩れ落ちた。 「ちょっと、大丈夫?」 「あ、ああ……。ごめん君の出した炎があまりにも眩しくて目まいが……」  光に浮かび上がるバンを見てクトリは理由が分かった気がした。  長い睫毛が生える彼の眼は大きく、薄い虹彩を覆うように瞳孔が開いていたのだ。  それはまるで夜道を歩く猫のようだとクトリは思った。 「君、とにかくここに座って……」  バンはまだふらつく足取りのまま立ち上がり、箒を入り口の壁に立てかけてからクトリに椅子を差し出した。  クトリは言われるがまま椅子に腰を下ろす。 「だいぶ腫れてるね」  バンは奥から持ってきた塗り薬をクトリの腫れた足首に塗ってから包帯を巻いた。 「あり、がとう」  クトリは頬を赤らめる。 「よく効く薬だから明日には良くなっていると思うよ。今日はうちに泊まっていくといいよ」 「そこまでしてもらうのは悪いわよ。それにおうちの人に聞かずに決めていいの?」  クトリの質問にバンの表情が少し曇る。 「僕は独りだから。大丈夫だよ。それに外は君にとって危険だからさ」  悲し気な笑顔を浮かべるバンを見て、クトリは複雑な気持ちになった。 「外が危険ってどういうこと?」  クトリは話を変えるように質問する。 「村の掟のせいさ。ここの村では村人が外の世界に行くことも、外の世界に住人が村に入ることも禁止しているんだよ。だから多分君が村人に見つかってしまったら捕らえられて殺されてしまう」  深刻な表情を浮かべるバンを見つめてクトリは息を呑んだ。 「そんな、それじゃあ、あなたは私を家に匿っていて大丈夫なの?」 「ははっ、バレなきゃ大丈夫さ。こんなバカげた掟に従う必要なんてないよ。それよりさっきの炎すごかったね! あれが魔法なのかい?」  バンは初めて見る魔法に興奮しているようだった。それでも治療を優先させる彼の優しさにクトリの胸はときめく。 「そうよ、さっきのは火の魔法。部屋が薄暗かったからつい灯してしまったの。驚かせてしまってごめんなさい」  バンは焦ったように両手を体の前で振った。 「そんな、ビックリしたけど大丈夫だから気にしないで! それでさ、君にお願いがあるんだけど……」  少しモジモジとしているバンがどこか愛らしく思えクトリは頬の筋肉を緩めた。
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