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その夜は、その食事と同じようなセックスをした。一口一口確かめて吟味して、五感全てを預けきるような、そんなセックスをした。少なくとも、テオドロスはそう努めた。
「電気、今日は消さないでくれ」
「……珍しい」
「今日はあんたを全身で感じたいんだ」
渾身の誘い文句に大地の目が少しだけ熱く燃える。その視線に、テオドロスは無意識に口角を上げた。獣のような飢えた目を向けられるだけでもテオドロスの体は熱くなる。おそらく大樹が思うよりも数倍テオドロスの体は熟れやすく、それを隠すためにいつも彼は必死だった。
テオドロスの体に触れようとする大樹を制し、テオドロスは彼の服を震える指で一枚一枚剥がした。現れた体は中肉中背とはいえ、しっかりと筋肉がつき、いい体をしていた。その体の線を隅から隅まで指でなぞり、唇を当てる。
薄皮一枚下に、どくりどくりと血液が流れるのを感じる。一番脈動を感じる首元に、テオドロスの爪でも立てたら彼の命は失われるのに、そこも、どこも、かしこも、彼は無防備にテオドロスの前に晒す。
このまま殺してしまおうか、と暗い気持ちに襲われるが、彼のテオドロスを見守る目線にその気持ちは瞬時に溶けてなくなる。骨ばった手が、テオドロスの髪を梳かし、耳の付け根を撫でる。
「そんな風にされたら興奮する。でも、そろそろ俺もお前を可愛がりたいんだけどな」
低く、欲望を隠さない声。ぞくり、と肌が粟立つ。たったそれだけでふにゃりと体から力が抜けてしまいそうなのを堪え、首を振る。
「口で、したい」
荒々しく立ち上がったそれに、テオドロスは唇を寄せた。躊躇うことなくその剛直を舌に乗せれば、どっしりとした重みを感じた。はむ、とまずは先を軽く咥える。つるりとした表面を味わいながら、ゆっくりと深く咥えていく。血管を浮き立たせた裏側をなぞれば、どくりとそれが跳ねる。こんな自分でも感じてくれているのかと、テオドロスは嬉しくなった。
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