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「無印なのに煙草とか、貴方アホですか? 下手したら早死しますよ」
皆人は、自分の前に流れてくる煙を運ぶ風に、眉根を寄せた。
「俺の勝手だ」
それを言われた男は、不機嫌そうに鼻を鳴らし、皆人に煙草の煙をあえて吹きかけた。そして、ゴツゴツとした指で自分の顔に影を落とすサングラスを押し上げる。その様子に、皆人は難色を示した。
「そのサングラスも。視界が悪いのは命取りでしょう」
顔色ひとつ変えず、いかにも興味なさげな抑揚のない声で、彼は一言だけ答えた。
「どうでもいい……」
「テオドロス」
皆人は少し軽蔑したような顔をして、言葉を続けようとして、やめた。それをみたテオドロスはつまらなそうに再び煙草を口に咥えて紫煙を吐く。
「お前らは俺が使い捨てられるまで、出来るだけ役に立ったらそれでいいんだろ。なら放っとけ、仕事はするさ」
「私達はそんな……」
言葉を濁す皆人に、テオドロスは口元を歪めた。開いた口元から鋭い犬歯が覗く。
「わざわざ言葉を弄して俺を主人から引っペがしたお前がよく言うな」
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