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「ぅ……洗濯物、取り込まないと」
真っ黒な首輪も自分と彼を繋ぐものだと思えば、窮屈さが快楽に変わる。大樹自身の手で彼の元に縛られた時は、そのまま達してしまいそうな程感極まった。嵌めてくれ、と言うことすら声がはしたなく強請る甘さを含んでいた自覚があった。
そんなことを考えているうちにテオドロスの瞳は情欲に潤み、それを鎮める為に深く息を吐き出した。そういった澱んだ感情を抱えたまま、大樹に抱かれる日々は背徳的で、罪悪感は増すばかり。アイヴィーの、テオドロスは彼の何なのか、という問いが心の中で反芻される。テオドロスのしていることは、明らかに隷獣の領分を超えていた。
「ご主人様が、幸せになるのが俺の幸せ。それを守るのが俺の役目」
それは間違いなくテオドロスの本心であり、そうなるべく行動しているはずなのに、どこか本質を欠いていた。だからこそ、動揺していた。
それは、歪んだテオドロスの大樹への想いがそこにあったからだ。そして、テオドロスが大樹から与えられるばかりで彼の幸せを守るどころか奪っているのではないかと、不安が頭の片隅をちらつくからだ。
「ただいま」
玄関の開く音がする。テオドロスは慌てて玄関に向かい、大樹の脱いだ上着を取り、ハンガーにかける。そうしていると、大樹の手がテオドロスの頬に伸びてきて、少し顔の角度を変えられる。ありがとう、という言葉と共に触れるだけのキスが落とされる。たったそれだけの行為にテオドロスはいつでも胸が締め付けられるような心地がし、そのぬくもりに口元が緩みそうになった。それでも、その度罪悪感が湧き上がり、やましさから少しだけ目を伏せて大樹に言うのだった。
「おかえり」
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