Prologue

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「……あんた、食わねえのかよ?」 目の前の人が言った。 彼も立っている。どうやら、わたしと同じように、辞去する面々に会釈していたようだ。 分厚い底の草履を履いているから一七〇センチを超える身長になっているはずなのに、わたしの目線のずっと上に彼の顔がある。一八五センチはあるのだろう。 でも、先刻(さっき)まで座ってたときにはそんな高身長の威圧感はなかった。 ……あ、そうか。胴が短くて脚が長いんだ。 わたしは目の前のテーブルに並べられた、ほとんど手つかずの料理を見た。 「そのツラなら、たかが見合いごときで緊張なんかしないだろ?」 ガンを飛ばす代わりに、今度は(あざけ)るような目でわたしを見る。 「『キャバ嬢の初詣』かよ、その格好」 ……あ、わかった! この人、わたしの外見が気にくわないんだ。
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