すっかり悪役《ヒール》になってます

3/6
8129人が本棚に入れています
本棚に追加
/541ページ
その視線の主は、わかばさんだった。 息を詰めて探るような目でわたしを見るその表情は、困惑と当惑しかない。 いつの間に、こんなことになってしまったんだろう?と思っているに違いない。 わたしが将吾さんの前に現れてから、まだ二ヶ月と経っていないというのに、もう婚約者なのだから…… 彼女はずいぶん幼い頃から将吾さんを慕っているのだろう。 無理もない……大会社の御曹司で高身長にイケメンという、超ハイスペックな人が同じ家にいるのである。おまけに、わたしへの対応とは真逆の「(とろ)ける笑顔」付きだ。 彼はわかばさんには信じられないくらい甘いに違いない。 ……これでは好きにならずにいられない。 彼女はかわいらしい子だから、きっと男の子からの誘いもあるだろうけど、将吾さん以外の人は目に入らないと思う。 紹介されたとき、管理栄養士になるための大学に通っていると言っていた。 もしかしたら彼の不規則な生活の中で、健康管理に役立つという思いからの選択だったのかもしれない。
/541ページ

最初のコメントを投稿しよう!