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もうそろそろ、お昼休憩も終わりだ。
「……あ、そうだ。大橋さ……」
と言いかけて……
「誠子さん」と言い直す。
「お料理始めるんでしたら、お弁当をつくることから始めるといいですよ」
わたしは食べ終わった容器を片しながら言った。
今日は話に夢中で、いつの間にか食べ終えていた。
「……わたしも、そうでしたから」
わたしはふっくら微笑んだ。
誠子さんも微笑んで肯いた。
美しかったけれど皮肉めいて見えた笑みは、もうない。
そういえば、今日は、彼女は長い髪を後ろで一つ結びにしている。ルージュもいつもより薄めだった。
昨日の今日でのあまりの変わりように、はじめはびっくりしたけれど……今ではすっかり感心している。
もしかしたら、この人も、このままではいけないなと、どこかで感じていたのかもしれない。
そして、自分を変える「チャンスの女神」と真正面からがっぷり四つになって、その前髪をがっちりと掴んだ。女神さまは後ろ髪を刈り上げにしたファンキーなお方だからね。
……いずれにせよ、いい傾向と対策だ。
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