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将吾さんが、くくっ、と笑った。
悪ガキのように、してやったりの顔をしている。
……なんだ、冗談か。
わたしがさらに頬を赤らめて、ちょっと口惜しそうな顔で彼を見上げると……
突然、ふっ、と真剣な表情になった。
「……ったな」
口の中でもごっとなにかをつぶやくと、ぐいっと肩を引き寄せられた。
バニラのような甘い香りが、わたしをふわっと包む。彼が血を受けたスウェーデンにある、バレードの「ジプシーウォーター」の匂いだ。
「補充してほしいのは……」
将吾さんが耳元で囁く。
「おまえの……キスだ」
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